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2012/01/28

AAIの臨床応用について

 しばらく前にostax35さんにコメントをいただいた(こちら)。私に分かる範囲でお答えしながら、エントリとして共有したいと思う。(記事がおかしかったようで修正しました。すみません)

 いただいたコメントは以下のようなもの。

当方は、非行・犯罪に関連する職場に専ら身を置き、クライアントの生活史や非行・犯罪場面をめぐる語りを聴取することを仕事にしている立場にありますが、これらについてのAAIにおける語り口への切り口は、クライアントのアタッチメントのあり方に限らず、大変示唆に富むものではないかと思っています。
アンテナが低いせいか、周囲には今のところAAIについて話をできる人がおらず、一人で資料の拾い読みをしている段階ですが、常々次のようなことが気になっており、非行・犯罪臨床にも関わられている経験から、ご助言などいただければありがたいなーと思っています。
1 日本で、AAIの考え方を勉強できるオープンなサーク ル・研究会などはないのだろうか。(AAIそのものの実施、評定、というよりも、その基礎理論を活用して、生活史、非行語りの物語的真実(?)にアクセスするための新たな「セット」につなげられるような。)
2 CrittendenらのDMM-AAIについてのMainらのスタンスはどのようなものだろうか。(CrittendenらのAssessing Adult Attachmentは、Mainらとの対比を意識し、その体系を踏まえよう(踏み越えよう?)としているように感じられるが、その逆はあまり見られないように思われるが、両者の間にどんなしがらみや因縁があるのだろうか。)
3  AAIの分析視角は、クライアントの処遇(?)の効果検証ばかりでなく、ケース担当者側がケース理解やケース記述を行う際のスキル向上にも応用価値が高いのではないだろうか。(効果検証への活用例については、以前の記事にも一部紹介いただいていますが。)

 司法領域を専門とされている方のようで、非常勤の形で関わっている私よりもきっともっと愛着や家族の問題に身を投じておられるのだろうと思う。そのような方がAAIに着目されていると言うことを嬉しく思うとともに、心強く思うのだけど、残念ながらAAIについて研究会などが開かれているということは聞いておらず、AAIの利用については研究グループごとに行われているため、私が知っていることがすべてというわけではないが、おそらく公開された形では行われていないと思われるため、現在のところ必要な情報は個人で集めるしかないのではないだろうか。
 ましてDMM-AAIとなると、実際に使っている人もいないのではないかと思うし、それほど知られてもいないのではないかと思う。私も人に教えてもらったのだが、2011年に"Assessing Adult Attachment: A Dynamic-Maturational Approach to Discourse Analysis"という書籍が出版されたため、これから読まれていくのではないかと思う。DMM-AAIというのはPatricia Crittendenが開発したAAIの改訂版で、私も詳しくは分からないのだが、おそらくインタビュープロトコルからしてAAIとは異なるところがあるのだと思う。スコアリングについてももちろんそうで、Dynamic Maturational Modelという名の通り、AAIと比べたときの違いは、年齢が上がるごとに環境への適応を果たしながら関わり方を変えていく可能性があることを考慮した分類であること、そのため年齢によって下位分類が増加していくこと、そしてその開発と適用にあたって精神障害者、低所得などの社会経済的なリスクの大きい人、あるいは犯罪者などが対象としてあげられていること、などである。理論的には単一の表象ではなく複数の表象が複雑に働くことを想定していること、それが発達段階の応じた適応の形をつくること、愛着理論の血筋としてそれは養育者との関係において形成されることを考えるものの養育者との関係で伝達されるのは関係のパターンではなく情報処理のパターンであること、情報には情緒的情報と認知的情報がありその偏りがDsとEの差異となること、情報の統合がFとなる一方その分断や未統合がサイコパスとなること、などが特徴としてあげられる。
 ちなみにCrittendenはAinsworthの弟子であるようだ。

 コメントにもいただいているように、こうしたAAIやDMM-AAIの語りへの注目、およびその分析の手法は確かに生育歴やその人の語りを聞く上で新しい光を与えてくれるところがある。一時期私はそう思いながら心理療法での話の聞き方にこれ(というのはAAIの語りの分析の視点の方)を取り入れてみようと思ったが、しかし、意外に臨床場面でリアルタイムに用いるにはなかなか難しいところがあって、それがどうしてなのかは分からないけれども、どこかこれは逐語録の分析にあてられるものなのだろうという風に思った経緯がある。それはもしかしたら人によるのかも知れないし、私の理解が足りないのかも知れないし、いずれにしても私にはその理由が分かっていないのだけど。それでも"Clinical applications of the adult attachment interview"という書籍も出ているわけで、どのように臨床場面にこれを応用できるか、場合によっては心理療法場面でも使えるか、というのはこれを読んでみても良いのかも知れない。
 私の知る限りAAIを用いた研究が圧倒的であるが、DMM-AAIを用いた研究も生み出されており、しかし両者の間にはなかなか交流がないようである。この辺はその中でもめずらしく両者を扱った研究になるのだと思うけど、実は私はまだこれに目を通してはいない。というのもあるし、行くところ行くところFonagyに出会うのもいい加減いやだなと思ったり。言うまでもなく愛着と精神分析と犯罪と攻撃性と効果研究とって、私が実証研究として行っていこうと思っているところのほとんどにFonagyが手を出しているのだ。まるで私がFonagyを追いかけているようなのだけど、Fonagyが私の先を勝手に言っているだけに過ぎないのだといささか主張したい。というような私の事情は置いておくにしても、2007年に私がAAIの研修を受けたときにはCrittendenの話などは一切出てこなかったし、DMM-AAIにおける分類とAAIにおける分類は必ずしもきれいな対応を示すわけではなく、例えばAAIにおけるDs2(derogationが強いもの)はDMM-AAIではEに分類されていたりして、AAI側からしたら意識されている様子はなかった。仮にDMM-AAIに移るとなると、おそらくインタビュープロトコルも異なることからこれまでの逐語録の蓄積も使えなくなったりして、そういうどちらかというと研究実践上の問題から、あるいはもしかしたら理論的な見解の不一致から両者の交流は図られていないように思える。

 というところくらいが私の答えられるところなのだけど、実は年末年始に仕上げなければならなかった原稿があって、そのために先に上げた本を読んでいたので、コメントに気付いたときには本当にすごいタイミングだなと思ったのだ。機会があれば一緒に読書会なり研究会なりをするのはどうでしょう、と思っています>ostax35さん。

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コメント

エントリ読ませていただきました。ありがとうございます。こちらは、Crittenden&Landiniの初めの方を読んで、訳がわからないながらも、「使えるに違いない」とかぶれてしまいつつ、まず、Steele&Steeleのchap.2あたりを読んで、オリジナルの方位を確認すべきか、などと思っている状態です。まったくの素人ですが、読書会、研究会、結構ですね。アドレスあてお誘いいただければ幸いです。

投稿: ostax35 | 2012/02/01 23:54

nocteさん
ずいぶん前にDMM-AAIについてコメントを入れさせていただきました。
AAIの続きのエントリなど楽しみにしていたのですが,しばらくお休みのようですね。いや,Fonagyの待ち伏せでもすべく,道をお急ぎでしょうかな?

以前話題に出しましたCrittenden,PartⅠのところは読んでみました。徹底したdanger重視,stimuli informationのtransformationのところ,memory systemごとの特徴を見ていくところなど,「本当か?」,「後でもっと根拠を教えてくれ」と思いつつ,やはり結構面白いです。

DMMに限らず,AAI,面接ナラティブ(ディスコース?)の話などエントリを楽しみにしています。

投稿: ostax35 | 2012/09/19 00:48

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