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2009/05/07

事例をまとめる

 精神分析学会の抄録の締切が明日までなので、このところ事例をまとめたり、本を読んだりして過ごしていた。抄録の文字数は4000字で、他の学会とは違って抄録として収録されたところから発表が大きくずれることは歓迎されない。そのため、特に実証系の学会のように、データをざっと分析をして、本格的な統計は後からみたいな手が使えない。しっかりしていると言えばしっかりしているし、まとめる側にしてみれば苦労するところだ。

 前に発表した際には、どんなふうに事例をまとめれば良いのかずいぶん苦労した。精神分析的な心理療法では、語られたことが必ずしも重要にはならないので、何が語られ、面接の関係にどのような流れがあり、どのような解釈がどのような相手の反応につながったのか、が描かれていく必要がある。他の人のものを参考にしようと思っても、私が考えていた面接の中の流れは何層にも重なりあっていて、他の人の発表ももちろんそうではあるのだけれども、どこをどうまとめるとこんなに短い症例提示になるのか、よく分からなかった。
 100回を越える面接を、原稿用紙10枚、実際には考察などを除けば多くても8枚程度にまとめることは私の能力を超えていた。おそらく、当時のスーパーバイザーの手を借りていなければ、私は症例をまとめることもできなかったと思う。

 今回はこれまでに何度か研究会で発表していた症例であったし、発表のたびに学会での発表も意識しながら検討をしてきたので、その点で前回よりもまとめやすかった。もちろん研究会や学会で発表するといっても、基本的にはそれが日常の臨床に、特にその後の面接経過に還元されることが私が求めていたことなので、発表のための発表をするつもりはなかった。むしろ、理解が深まり、介入につながることを期待して、これまでとこれからをつなげていきたいと思っていた。それは今回の抄録においても同じである。
 今回抄録をまとめやすかったのは何度かの発表の機会があったためでもあるけど、そうやって事例の理解と事例をまとめることとをつなげようと続けてきた努力や、その事例を精神分析的に理解していくという作業に私が前よりはうまく取り組めるようになったことのためかもしれない、と思ったりする。確かに前回苦労したように面接の流れにはいくつかの筋があるけれども、それでも1つの面接の経過は大きくは1つの流れになっているわけで、それは日々の臨床の中で私の中にあるはずのものなのだと思う。それが間違っている場合もあるし、うまく現実と一致している場合もあるけれども、何にしても毎回の面接の中で考えていなかったことを発表のために考え出すことはできない。抄録や事例をまとめるということはそうではなくて、いつも考えていることを言葉にしてみるという作業をしていくだけなのだと今は思う。
 ある意味ではそうやって無理をしなくなったこと、別の面では無理をしなくてもいくらか知識や理解の仕方にまとまりがでてきたことが事例をまとめやすくなった1つの要因だろうかと思う。少なくとも抄録をまとめるという作業の水準においては進歩が見られたということは、私にとってはうれしいことである。後は、学会での発表なので、単なる事例報告ではなく、他の人にも役立つ何かを提供できていること、それから何より今回こうして面接をまとめたことが次の回に、そして学会での発表やコメントがその後の面接に生かされることを願うばかりだ。

 実証研究の発表も緊張はするけれども、事例研究にはそれに直接に関わっている誰かがいるという点で、いつも私が試されているようで気が引き締まる。

 ああ、良く考えたら、それ以前に発表が受理されるのかという大きな問題があった。これが受理されないというのは、考えてみれば面接を理解する能力に不足があると言われているようなものでもあるし(必ずしも同じではないにしても)、無事に受理されて欲しいと思う。

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