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2008/10/21

愛着表象の測定

 らく〜んえみりぃ in UKさんのところで愛着表象の測定の話があって、というかStory Stemという方法の話があって(リンク)、それにつられてのエントリ。幼児の愛着表象の測定法についてちょっとまとめてみた。

 愛着が何かとか表象が何かとか愛着表象とはとか、そういう話は略。愛着パターンの測定はご存知の通りAinsworthらによるStrange Situation Procedureがその始まりで、12ヶ月から18ヶ月の乳幼児と養育者のペアを対象としている。一般にこれは乳幼児の愛着パターンを測定するものとされているけれども、多分現実的には乳幼児−養育者の相互作用を測定している(とAAIの研修の際に教わった)。
 これをもとにその後の幼児の愛着パターンや愛着表象の測定法が開発されるのだが、より後期の幼児へのStrange Situation Procedureの適用はここでは省略して、後者の愛着表象の測定について。

 おおよそ就学前に幼児は、それまでの体験を心的な表象として体制化し、組織化し、養育者や他の重要な他者との安全な関係についての枠組みを形成する。その枠組みは相互作用への注意を選択し、それを知覚し、解釈し、それを予測し、自らの目標を形成し、行動を起こし、さらにその目標を修正する一連の過程を規定するものとなる。
 表象の測定はこの枠組みをどうやって表に出してもらうか、ということにかかっているが、その端緒は1972年のHansburgによるSeparation Anxiety Test。これは6枚の愛着に関連した場面であるところの分離場面の写真を見せ、その場面での子どもの気持ちや行動、親の行動の予測などについて被験者に話してもらうというもので、ここにその被験者の持っているスクリプトが表されるだろうというもの。対象は青年。その幼児版(4〜7歳)が1976年に出版されたKlagsbrun & BowlbyによるSAT。
 その後、このSATの分析の枠組みを変更しながら、また対象とする年齢を変えながら新しい測度が開発されていくのだが、1つがKaplan (1987)によるもの。これはSATの刺激をそのまま用い、分類システムをオリジナルのものにしたもので、対象年齢、というか被験者が6歳児。12ヶ月時のSSPとの対応が約70%弱。分類は3タイプに相当するもの+fearful(Dに相当)。
 同様のものとしてJacobsenら (1994)のものがあり、こちらもSATの写真を使っているが、それに加えてより長期の分離に関連した写真も導入。18ヶ月時のSSPとの対応が80%強、より後期のSSPであるMain & Cassidy法との一致率は90%弱。分類法はKaplan法に準拠している。
 他にSlagh & Greenberg(1990)というものもあるようだが、こちらはSSPが標準の手続きに乗っ取っていないためカッコ付。

 そしてしばしば引用されるBretherton, Ridgeway, & Cassidy (1990)によるAttachment Story Completion Test。これは人形を使う。初めに物語が検査者によって導入され、それは家族を模した人形を使って行われる。物語は途中で終わり、その続きを子どもに人形を使って演じてもらうというもの。物語は5つあり、そこに分離と再会の物語が含まれている。分類はA、B、C、Dの4分類で、Cassidy &Marvin法によるSSPとの対応がsecure-insecureで75%。AQSとの相関も見られる。その後これはさらにExtended版が作成され、それはどうやら親が離婚した子どもにも適応できるようになっているようだ。研究の対象児は3歳。
 それからSolomon & George(1994)、 Solomon, George, & De Jong (1995)によるSeparation Reunion Story Completion Test(だったと思う。私のメモにはSRSCTと書いてある)。これは幼稚園児を対象に、ASCTの分離−再会場面を用いている。分類は同様に4分類で、Main & Cassidy法によるSSPとの対応が約80%。
 他にも、Cassidy (1986, 1988)による、Incomplete stories with doll familyとか、Oppenheim (1997)によるAttachment Doll-Play Interviewとかがあって、Bretherton, Oppenheim, Buchs-
baum, & Emde(1990)によるMacArthur Story Stems Batteryなんてのもある。最後のものは愛着表象だけにとどまらず、社会的認知や道徳発達まで扱うもので、これもよく利用されているよう。

 そんなこんながあって、最近、Goldwyn, Stanley, Smith, & Green(2000)によるManchester Child Attachment Story Taskというものまで開発されるに至っている。これは小学校低学年を対象とし、ASCTと同じように人形を使用する方法で、それに加えて家も用いる。いわゆるdoll houseと呼ばれるものなのだろう。全部で7つの物語があり、分類はA〜D+CC。SATとの対応が約80%、親のAAIとの対応が60-77%といったところ。

 これらはすべて小学校低学年までの幼児を対象とした愛着表象測定の方法で、おそらくそれぞれに長所短所があるのだろう。日本における研究をきちんと探したことがないので分からないが、少なくともあまり発展している分野ではなく、理由の1つはもしかするとマニュアルが基本的に公開されておらず、これらを使用するには研修を受ける必要があるためかもしれない(もしかするとマニュアルをみせてくれて、研修なしでも使えるものもあるのかもしれないけれども)。

 らく〜んさんが使用されているStory Stemがどれにあたるのか分からないけど、どんなふうにしているのが興味があるところ。Anna Freud CenterではStory Stem Standardisation Projectということを行っているようで、その元はMacArthur Story Stems Batteryのようにも思える。
 私の研究対象は青年〜成人なので、これらを使用する機会というのもないだろうけど、興味を引かれる。良かったらご紹介ください > らく〜んさん。

 大人の愛着表象の測定についてはまた気が向いた時に。

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