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2008/08/02

WAIMH雑感

 世界乳幼児精神保健学会で横浜に来ている。最近、というか去年AAIの研修でstrange situationのビデオを見せてもらってから、乳幼児観察の面白さに目覚めて、それ以来ずっと関心が続いている。そうした関心をさらに強める出来事もあったりしたところに、この学会。全く縁のない学会だったけど、やっぱり面白い。

 一番面白いと思うのは、乳幼児のビデオ。いくつか臨床家の発表も聞いていたけれども、そのどれもでビデオが使われていて、circle of securityとかの去年知った介入法でもそうだったのだけど、安全な愛着を支え、促進する介入はどれも母子の相互作用をビデオに撮って、それを積極的に利用している。場合によって複数台のビデオカメラで、たとえば向かい合った乳児と母親の姿をそれぞれに追いかけていたりする。そのビデオを使いながら相互作用の分析をしたり、フィードバックをしたり、スーパーバイズをしていたりするようだ。
 MBTでもビデオは使われていて、主にスーパービジョンのために使用される。DBTでもそうだったかもしれない。

 これまで心理臨床ではビデオやレコーダーといった機材を使用することについてはかなり慎重であり、つまりそういった機材が持ち込まれることで2者の交流に第3者の目が、あるいは第3者性がもたらされ、2人の、あるいは自分1人のための空間であるという安全が脅かされることが懸念されてきた。私もそうした文化で育ったわけで、今でも私の面接にはメモ用紙さえ持ち込まれない。学生たちにも話に集中するようにメモをしないことを勧めている。
 でも、ことスーパービジョンに関する限り、記録は正確であるほうが良いのではないかと最近思う。記録をプロセス・ノートと呼んで、臨床家の記憶に残るもの、その変化を含めて心理療法の経過と考える人たちがいるし、私もそれにある部分賛同するものだが、おそらくそれは個人の内的過程を適切に反映したものではないし、特に面接する側が学生など心理療法に携わり始めたばかりの場合はそうなのだと思う。自分のことを振り返っても。

 スーパービジョンのことはほかにも多分考えなければいけない問題があるのでとりあえず横に置いておくにしても、少なくとも発表を聞いている時には、映像を見せられると、相互作用の様子が直接的に、また具体的に分かって理解は進むし、興味も引かれる。録音や録画ということについて、もう一度考え直してみてもいいのかもしれない。
 そう書きながら、何かワナがあるとすれば、その「直接的」で「具体的」なところなのだろう、と思うのだけど。

 いずれにしても、乳幼児と母親(養育者)の相互作用を理解できるようになると、他者を理解する作業の深みが増すのだろうなと、考えている。そういえば、大学の時の発達心理の先生は幼児の観察をしていたのだけど、今にして思えばそれに全然関わっていなかったことがもったいないことだと思う。

 その他、雑感として、思った以上に愛着理論が広く援用されていることに驚く。もっと古い理論扱いをされていたり、どちらかというと隅に追いやられがちなものかと思ったら、いくつかのシンポジウムで発言をする研究者の発表の中に何かの形で愛着なり絆なり安全なりが出てきて、いくつかの介入の基礎にもなっている。新しい理論はいくつも出てきているし、特に認知発達については1つのトピックになっていたのだろうけど、そうした認知発達を可能にする情緒的基盤としての愛着関係は私が思っている以上に、広く支持されているものらしい。
 それ以上に驚かされるのが、力動的な観点も曲がりなりにも受け入れられていること。conteinやtransferenceなんて言葉が聞かれたりして、私は乳幼児観察にそうした視点を導入することには慎重な方なのだが、世界にはそれをやってのけている人たち(しかもシンポジストであったりもする)もいるのだな、と新鮮に思う。

 1つ良いなと思ったことは、ボランティアやいろいろな発達上の課題を持った子どもの親の会も学会の運営に関わっていること。精神分析学会では無理な話だけど、心理臨床学会ぐらいならそうした動きがあってもいいのにな、と思ったりした。

 まだ火曜日まで続く学会なので、いろいろと吸収してこようと思う。

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