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2008/08/19

愛着に基づいた介入

 WAIMH雑感の続きと言ったところだけれども、学会では力動的な観点も思いのほか取り入れられている印象があったし、愛着という視点も共有されたものとして話されている印象があった。力動的なことは置いておいて、このエントリは愛着の視点が共有されているということについてなのだけれど、特に介入の研究においては愛着に基づいて(attachment based)ということがしばしば口にされていた。

 介入は、例えば(超)低出生体重児、自閉症児、発達障害児、(詳しくないので分からないけれども)何らかの新生児における疾患などを抱えた「親子」に対して行われていたように思う。愛着に基づいた、ということは、言い換えると安全な愛着を形成することが1つの目標になっているということになるのだと思うし、そうした愛着の安全性の重要性が広く受け入れられているということが、意外な感じがした。
 その理由について考えてみたのだけど、日常的な意味での心理臨床でいえば、例えば発達障害児や、特に発表が多かったので取り上げるけど、自閉症児に対して、このような関係に注目した介入というのは日本ではほとんど行われていないように思う。自閉症児も愛着を形成する、ということが言われているけど、それでは健常な乳幼児の愛着と自閉症児の愛着とがどのように違うか、ということになると、そもそもベースとなる行動パターンや相互作用のあり方が違いすぎて、それをきちんと語れる人は(それほど)いないのではないかと思うし、少なくとも私は語れない(といっても、健常な乳幼児の愛着についても、たいしてうまく語れるわけでもないのだけれど)。
 でも、海外では、どのようにして親子が安全な愛着関係を築けるのか、ということは、こうした発達的な問題を抱えた子どもたちへの介入上の目標の重要な1要素になっているようで、すでにその実践もある程度積み重ねられているようだった。

 何が言いたいかというと、日本での発達障害児の臨床は、私の印象では、問題行動ベースというか、もう少し大ざっぱに言うと、症状ベースの関わりになりやすいように思うし、介入の対象は、基本的に子どもになっているように思うのだ。母親(に代表される養育者)は協力者という位置づけにはなるかもしれないけれども、母子関係(や親子関係)が介入の焦点になっていくという発想はそれほど一般的ではないように思う。
 それが良いとか悪いということではなく、親子関係のあり方をベースに介入する方法があるのだなということ、それが広く共有されているということが私には驚きだったということだ。

 それはそれで愛着理論に関わるものとしては勇気づけられることであったし、その視点を通してあまり親しみのなかった発達障害児たちへの理解や関心が、少なくとも私には高まって、同じように感じる人もいるのではないかと思うのだけど、逆に、そうした安全な愛着関係が築かれるということが、例えば自閉症児が持っている個々の問題行動と呼ばれうるような行動パターンや相互作用のパターンに対して、どのような影響力を持つのだろうか、というか、安全な愛着関係が築かれるとそれで具体的に何がどう良いのだろうか、ということがよく分からないなと思ったりもした。
 例えば、といいながら良い例えではないかもしれないけれども、対象関係論はそれぞれの病理の背景に対象関係の問題がある、という理解があるので、心理療法での関係を重視し、「私たち」の「関係」を話題の俎上にあげていく。それが介入の(背景であると同時に)焦点にもなるし、人によってはそうした発想を自閉症という問題にも応用していく。
 それに対して、愛着に基づいた介入、という時に、愛着の不安定性が発達障害児の抱える問題というものにどのように関係があって、そこに介入するのは、愛着の安全性を高めてそれでどうなることを狙っているのかということがまだよく分からなかったのだ。一般的なこととして、愛着が安全であるということが精神発達上良好な影響を持つ、ということは分かるにしても、それが特定の問題なり、発達上の問題を抱えている子どもたち、あるいはその親子にとってどう必要になるのか、という、療育上の何か特異的な必要性があるのかどうかということが分からなかったのだ。
 安全な愛着だけでは十分ではないだろうし、例えば自閉症児には自閉症児に必要な療育上の配慮や介入があるのだろうけど、何となくそうした特異的な要素が見えにくくなってしまっている印象を受けたりした。というか安全な愛着の位置づけの問題なのかもしれないけれど。

 それは単に私の勉強不足なのかもしれないし、そもそも問いの立て方が間違っているのかもしれないけれども、愛着に基づいた、ということがわりと共有されている発想でありそうなだけに、改めて安全な愛着を築いてそれでどうしようとしているのか、というところが語られなかったので、よく分からないなと思ったのだ。
 それはこれからの課題かな、と思ったりした。

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