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2007/10/08

実験の世界

 心理臨床学会も終わり、いくつかのブログではその話題も出てきているが、大学では今の時期は科研の申請の時期になる。私は今年は関係がないけれども、前にエントリに出てきた基礎系の先生と話した時に、研究とお金の話になった。臨床系の人には関係がないかもしれないけど、隣の領域ではこんなことも起きているという話。

 その先生は実験系の先生で、psy-pubさんとちょっとすれ違いつつもやり取りがあったように、この領域の人たちはだんだんと神経や脳や、そういった領域に流れていっているようだった(「科学・臨床・関係」あたりのエントリ)。理由は2つあるようで、1つは動物実験が以前のようにできなくなっていること。倫理的な問題が大きくなり、単純に実験が難しくなっているという点と、倫理委員会のような組織を作ってそこでの検討を経たという形をとることが望ましいとされるようになり、そのような組織(倫理的な観点だけではなく、ある程度実験の中身やその意義を知っていなければ判断が出来ないという意味でどの分野の人でもいいというわけにはいかないのかもしれない)を作れないところでは、実験を行うことが難しくなっているらしい。もう1つはさまざまな技術の発達により直接に人を対象として実験を出来るようになっているようなので、いつまでも動物を使って人間に近似させるよりも、脳や神経生理学的な研究を行っていった方がいいということらしい。けれども実際にはこうした実験を行うためにそちらは必要な機材や実験器具や例えば試薬や消耗品なんかが動物実験をする時よりもケタ違いに予算を必要とするようで(私にはそれが何かは分からないのだけど)、なかなかすぐにそちらに移行するというわけにはいかないらしい。
 結果として、自分の領域が衰退していくのを指をくわえて見ているしかないという事態に陥っているようで、それは悔しいだろうと思う。

 そこで注目されるのが科研なわけで、場合によってはこれで非常に大きな予算を得ることが出来る。国はそれぞれの大学に予算を均等に配分することをやめて、そのかわりに可能性のある研究に大きな予算を充てることにしたので、これをもってすればそれまで購入することの難しかった機材などの購入も出来るようなのだ。もちろんここには別の困難があって、例えば心理学の講座やコースに大きな機械を導入できるような実験スペースがあるかという問題があったりもする。科研では基本的にそうした設置場所を整えるための予算までは計上できない。それでも、後のない実験系の人々にとっては、これが最後のチャンスかもしれないようなのだ。
 そのような話をしていた時に出てきたのが、もう少し機材の単価が安くならないかということ。科研で使える予算はそうは言っても限られていて、例えばそれは若手AとBとSでは違うし、基盤AとBとSとでも違う。その辺をかんがみて単価を設定してくれれば潜在的な購入層はあるので、もっと売れるだろうにということだった。さらに、そのカタログをこの科研申請の時期に合わせて配布するようなことをすれば、そのメーカーの製品に注目する人も増えるだろうにということもあるらしかった。しばしばあるように製品には定価があっても、実際にいくらで納入されるかは見積もりを出してみないと分からない。予算の計画を立て、研究の計画を立てるためにはそうした見積額も必要なのだ。そうした作業に使えるようにカタログが送られてくるだけで、役立つ人は結構いるだろう、というような話だった。
 いかがですか。商売のチャンスでもありますよ>機材や消耗品のメーカーさん

 あまり知らない隣の世界の実情だったのだけど、なるほどな、と思った。私たちの研究は正直、臨床的な研究に限っていえば大きな予算はなくても何とかなる。それでも最近は共同で研究する規模の研究が必要とされて来つつあるけれども、差し当たって事例研究に関して言えば必要な予算は文献を取り寄せるための数万で可能だろう。そうした世界から比べると機材がなければ話にならない世界というのは、しかもそれが新しく移行しなければならない状況の下で、というのは大変なことだと思った。例えば攻撃性の研究にしても、精神内界を探求していくのとは違った知見を示す実験系の研究は面白いと思うのだ。倫理的な問題がクリアーされて、予算の問題もうまくいくことを願うしかないのだけど、こうして実験系の世界が消えていくのも寂しいなと思ったりするのだ。

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