« 機知、あるいは冗談について | トップページ | サイコロジスト »

2007/05/30

愛着研究のささやかな動向

 AAIの研修会に参加して、そこに日本人留学生がいる話は前回のエントリに書いたが、その人と話をしていて、ある愛着研究者の集会というか研究会にその人が行った時の話を聞いた。そのうち私もそれに参加してみようとは思ったのだが、そこではプレコングレスのような形で分科会らしきものが行われていたらしい。

 いくつかあるその分科会の中でもっとも人が集まったのは、現在の愛着研究の主領域のどれでもなく、最近明らかにされつつある脳の機能、あるいはその測定に関するセクションだったらしい。比較的年配の人はそれ以外の領域の分科会に集まっていたらしく、その違いをその人はこう説明してくれた。
 つまり、もうすでに年配の人たちがやっている研究では自分たちは自分たちのオリジナルな研究をしていく事ができない。だったら新しい領域で自分を売っていった方がいいのではないかと。

 それは単に研究の中身の問題だけではなく、例えば、AAIの研究者にもいろいろな人がいて、そこにはいろいろなしがらみもある。そういうことらしい。しかし、ともかく若手研究者たちは自分たちのオリジナリティと居場所を求めて、新しい領域を開拓しようとし、おそらく結果的にそれは愛着研究のすそ野を広げる事につながるだろう。

 Decoさんのエントリでは、愛着研究は下火になっているのか?といったことが書かれていたが、確かに今の段階でできる研究は一通り出揃っている状況なのかもしれない。今は多分、その次の段階に向けての準備がされているのだ。
 例えば、愛着領域における神経学的な研究は2000年ごろから散見されるようになってきて、子どもの脳の発達に関する関心が高まるとともに、それが養育によってどのように変化するのかについても注意が向けられるようになってきている。「Emotional Developmental in Psychoanalysis, Attachment Theory and Neuroscience」なんて本も2003年に出ていたり、「The Developing Mind: Toward a Neurobiology of Interpersonal Experience」なんて本は1999年に出ていたりする。
 また発達・臨床領域に欠かせないAAIは、現在のところUnresolvedについて未完成であり、Cannot Classifiedについてはマニュアルに判定の仕方も載っていない。Mainとその周辺の研究者が試行錯誤しながら分類を行っている状態のようだ。質問紙に関しても3分類から4分類への移行も終わりつつあり、Shaver & Mikulincerあたりの包括的な論文が出てから、さてそれでは質問紙では捉えきれない部分をどうするか、といった事が課題として取り組まれているだろう。おそらく。AAIや愛着の質問紙の抱えているいろいろな特徴・問題についてはまた別のエントリで書いてみたいが、おそらくこの辺が整ってきたら愛着研究は新しい展開を示すようになるのではないかと思っている。

 こうしたことを留学生と話しながら、興味深く思ったのは外国では若手研究者は自分の関心のある事という事よりも、あるいはそれと同時にオリジナルの研究であることを強く意識して研究対象、あるいは領域を選択しているという事だった。確かに研究者として生き残ろうとすればそうしなければいけないのだろう。
 それと比べて自分はそうしたどん欲さを持っているだろうかとふと振り返った。別に私は自分のオリジナルを志向する傾向を強くは持たないのだが、しかしオリジナルであるという事はそこに新しい意味が含まれているということではあるわけで、自分の行っている研究がどのような意味を持っているのか、そうしたことはできるだけ視界を広くして考えていかないといけないなと思った。

|

« 機知、あるいは冗談について | トップページ | サイコロジスト »

コメント

TBありがとうございます~!

いつぞやサイパブさんのところでお話を振っていただいたのにも拘わらず,お返事できずスイマセンでした。


愛着研究の中でも,特に社会心理マナーな研究シーンは基礎理論研究ネタが出尽くした感がありますから,「じゃあその基礎理論使って何やるの?」っていう段階に入りつつあるのかなぁなんて想像しています。

JCCP辺りでも愛着臨床研究の特集が組まれたりして,こっちは下火どころかまだまだ熱そうですよねぇ。なので,その辺との絡みもまた楽しみだったりします。

AAI関係の論文はメッキリ読むのをサボっていて,動向が分かりませんがorz

投稿: deco | 2007/06/05 21:14

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/88325/15254041

この記事へのトラックバック一覧です: 愛着研究のささやかな動向:

» 最近のアタッチメント 〜終わりゆくブーム〜 [DECOllated by statistics]
ヘイヘイヘイヘイ!今日はアタッチメントの最近の動向をチェックするぜ!!アタッチメントとは言っても,頭にパチパチとつける,そうだな,ちょうど美川憲一が被っているような,髪の毛型帽子の話ではないんだ。アタッチメン... [続きを読む]

受信: 2007/06/05 21:02

« 機知、あるいは冗談について | トップページ | サイコロジスト »