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2007/03/06

ExnerとLerner

 人伝てで聞いたのだが、昨年ExnerとLernerが相次いで他界していたらしい。今さらながらそれを知った。

 Exnerは言うまでもなくロールシャッハ・テストの研究者で、包括システムあるいはExner法と呼ばれる解釈法をまとめあげた人物だ。その特徴はテストとしての信頼性・妥当性を高めながら、臨床的な検査法としての利用価値をあげようとしたこと、そのために多くの実験および統計的検討を加えたことにあると言えるだろう。
 他方で、Lernerはやはりロールシャッハ・テストの研究者であるが、メニンガー・クリニックでRapaportとSchaferによる教えを受け、精神分析的な解釈法の探求に専心していた人物である。診断法としてのロールシャッハ・テストではなく、個人を理解する方法としてのそれを重視し、特に境界例についての書物を著している。
 (これらについては、もっと詳しい方の補足があればお願いします。)

 ここにあげられた2つの方法は、端的に言って現代の臨床心理学の異なる2つの立場であると思うし、また同時に人間、あるいはその心への異なる2つのアプローチであると思う。どちらがより優れているということではなく、例えどちらの方法をとっても、同じ個人については同じような解釈にたどり着くであろうし、その一方でいずれかの方法でしか見えることのできない個人の側面というものも存在しているだろう。1つの物事に対する異なる2つのアプローチというものはそういうものであると私は思う。
 こうした話をしていていつも思うのだが、私たちの前には心理学とは科学であるのか、あるいは心とは科学的存在なのかという問いがずっと突きつけられているのだ。その問いにロールシャッハ・テストという道具を通して答えようとしていた2人が、こうしてわずかな間に世を去ったのはとても残念なことではある。私はロールシャッハ・テストの専門家ではないけれども、生涯をかけてその研究に邁進したという点において、2人には尊敬の念を表したい。

 それでも時間は流れていく。どの程度かは分からないにしても臨床心理学も前進するだろう。しばらくしたら、この分野にも新しい動きが出てくる。だからというわけではないが、今は2人の人物の死に対し静かに冥福を祈りたい。

 心とは何かそれはどのように捉えられるのか、あるいは捉えるべきなのか。その問いは今もまだ漂い続けている。どこかで自分なりの答えを出せればいいのだけど、と思う。

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