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2006/11/18

帰属について

 これまで帰属という言葉は原因帰属という言葉と一緒にしか意識したことがなく、原因帰属は物事の原因を自己か外界かのどちらに帰属させるかといったことを表しているのだろうとしか考えていなかった。しかし、帰属について調べてみると、それは対人認知の1つとして他者の固有の特性に関する推論を指していることが分かった。それは興味深いことだったので、テキスト(対人社会心理学重要論文集5「対人知覚と社会的認知の心理」)を片手にまとめてみた。

○帰属研究の始まりはHeider(1944, 1958)
 人はさまざまな行動や現象をもとに、その人物の安定した固有の傾向性を推測

○Jones & Davis(1965)による発展
 観察される結果・行為から他者の意図・傾性が推測される(推論)
  前提条件
   他者がそうした結果になると知っている(知識)
   他者がその結果を生じさせる能力が技能を持っている(技能)
  推論の対応度
   対応=行為と内的属性の一致 …推論の行いやすさ
      行為の選択肢が多い(状況の拘束性が低い)ほど行為と傾性は対応すると考えられる
      一般的な反応と違うほど行為は傾性と対応すると考えられる
      (対応度=行為に含まれる他者の独特の個性に関する情報量)
   対応度の規定因
    観察される行為にのみ見られ、他のありえた行為の選択肢にはない要素(非共通な結果)が多くない
    非共通な結果の社会的望ましさが低い
    行為が自己に賞や罰を与える場合

○Kelley(1967)によるモデル
 帰属=環境内の実体の固有の傾向属性を推論または知覚する過程
  →因果関係の分析が行われている
  (人は応用科学者であるという視点)
  結果が生じた時に存在し、結果が生じない時には存在しない要因に帰属がなされる(共変原理)
    主要な変動因 弁別性(すべての他者・他者の行為に同じようには反応しない)
           時を超えた一貫性(その他者・他者の行為にはいつでも同じように反応する)
           様態を超えた一貫性(その他者・他者の行為の表現が違っても同じように反応する?)
 →因果関係の分析を行えるほど行為が繰り返し観察されないことがある(Kelley, 1972)
 割引原理
  他にもっともらしい要因が存在すればある要因への帰属は割り引かれる
 割増原理
  抑制的な要因が同時に存在すればある要因への帰属は割り増しされる
 因果スキーマ(Kelley, 1972)
  2つ以上の原因が相互作用する様式についての考想conception
   MSC ある要因がない時にはもう1つの要因が存在しているというスキーマ
   MNC ある要因とある要因が同時に存在しているというスキーマ
   他者への帰属が起きるようなスキーマ
   自己への帰属が起きるようなスキーマ
   など

○Jones & Harris, 1967の実験
 Jones & Davisの対応度に影響する選択の自由度と予想に反する程度(社会的望ましさ?)の検証
 →選択の自由度や予想に反する程度の影響は少ない
  表明された意見からの態度の推論がなされる
  交互作用がある場合もある


 あまり書きすぎても仕方ないのでこの辺までにするけれども、まとめているうちに面白みがずいぶん減ってきたように思う。帰属理論について考えることが面白いと思ったのは、これが表象モデルについて考える上で役立つように思えたからだ。人は他者の言動からその他者の意図や自分への思いを推測するけれども、愛着理論ではそれを表象モデルによって説明している。ある種の表象モデルが内在化されており、それに沿った形で他者の言動は解釈されると考えられる。それがつまり帰属であり、その意味で愛着理論は帰属の個人差を説明する枠組みを提供しているように思える。
 ここで言えば、Kelleyの因果スキーマのうち他者・自己への特定の帰属が起きるようなスキーマが内的作業モデルであり、それによって他者の特定の意図や感情、関心、応答性などの帰属がなされると考えることができる(MSCやMNCが同時に作用していることもあるだろう)。ここには書かなかったけれども、知覚的に目立つものから推論が行われるという研究もあり、それはつまり、表象モデルによる注意の選択性に関連させれば、個人の持っている表象モデルによってある言動に注意が向かいやすく、それによる特定の意図等への帰属がさらに行われやすくなるということにもなるだろう。
 それはまた、ある表出されたどのような言動から他者のどのような意図等に帰属を行うかを知ることによって、その個人が持っている内的作業モデル、ないしは表象モデルを捉えることができるということでもある。それは私たちが臨床的に対象関係、ないしは対象表象について考える際に捉えている1つの焦点でもあるだろうし、研究として表象の測定を行う際にも指標の1つとして組み込めるものではないだろうか、ということを考えてみた。
 そこから先へまだ考えが進んでいないので、そのような気がする、というだけの話なのだけれども、少し帰属理論とそれを用いての表象理解について調べてみようと思った。

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