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2006/09/12

人格障害の心理療法の効果研究

Leichsenring, F., & Leibing, E. (2003) The effectiveness of psychodynamic therapy and cognitve behavior therapy in the treatment of personality disorders: A meta-analysis. American Journal of Psychiatry, 160, 1223-1232.

Svartberg, M., Stiles, T. C., & Seltzer, M. H. (2004) Randomized, controlled trial of the effectiveness of shor-term dynamic psychotherapy and cognitive therapy for cluster C personality disorders. American Journal of Psychiatry, 161, 810-187.

 どちらも人格障害の(短期)力動的心理療法と認知(行動)療法の効果を比較した研究で、上のものがメタ分析、下のものが単一の研究。

 結論から言うと、どちらも効果に大きな違いはないようで、いずれの心理療法も人格障害の治療に有効であることが示されている。心理療法を行うことは行わないことより良いという結論。
 ただメタ分析の結果からは、認知行動療法の回数が少ないこと、力動的心理療法ではセッション数、フォローアップ期間が伸びる(治療終結から時間が経つ)と回復率が上がることが示されている。フォローアップ期間が伸びると回復率が高まるのは下の研究でも言われており、特に症状ではなく人格の機能性にそれが見られている。
 またメタ分析の結果からは認知行動療法では自己報告による改善が目立つのに対して、力動的心理療法ではインタビューから評定される改善(他者評定)が目立つことも示されている。

 (短期)力動的心理療法と認知(行動)療法は、ともに有効でありながらも、やはり治療の焦点となるものが違うことが、やや明確ではないものの示されているし、それが今後の研究で明らかにされるだろうという予感を漂わせているように思う。なお、上の研究はメタ分析の研究としてはサンプル数が少ない、研究デザインが不ぞろい、などの限界を抱えており、この結果を必ずしも一般化出来ないことには注意が必要なようだ。

 さて、日本でこうした効果研究が行われるようになるのはいつだろうか。

 少なくとも精神分析的な心理療法をやっている人たちは、なかなかこの流れには賛同しないだろうと思うし、日本において力動的心理療法と名乗ってやっている人もあまり知らない。そういう意味では、まだまだ難しいのだろう。
 そもそも効果研究というのは、社会に向けてやるものなので、目の前のクライエントにはあまり関係がなかったりする。あえて言えば、将来のクライエントのためにやっているというべきか。なので、今心理療法をやっている分には役に立たなかったり、2人の関係の中に調査研究が入り込んでしまうことの弊害なんかも本当は考えなければならないのだろうとも思う。

 関心はあるにしても、いざ自分が、という時になると、やはり私も躊躇するだろうと思うのだ。

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